力の強制発動はすなわち、自爆のようなものだ。

「僕がこの国にいるうちに、あやかし王を仕留めないのならそうなるな」

 澄八は琴禰の退路を奪った。

 裏切れば死が待っていると、暗に匂わせていた。

(このまま穏やかで幸せな日々を過ごしたいと願うのは、しょせん叶わぬ夢だったのね。煉魁様を傷つけようとする者は誰であっても許せない)

 ふいに脳裏に浮かんだことは、とても恐ろしい行為だった。

 これまでの琴禰なら、絶対に思い浮かばない考えだ。

 叶わぬ夢を叶える方法。それは……。

(彼を殺すしかない)

 澄八を殺す。すなわちそれは、血の契約を断ち切ること。

 震える手で、覚悟を決めた。

 だが……。

(体が、動かない)

 まるで全身の血が固まったように動かなくなった。

 まるで人形のように顔が真っ白になり硬直した琴禰の変化に、澄八は苦笑いして後ずさる。

「さては琴禰、僕を殺そうとしたな。血の契約は決して破れぬ誓い。僕を殺そうとしても流れる血がそれを制する。自死しようとしたところで同じことだ」