煉魁は心配そうに度々琴禰の顔を見にきたが、寝ているのを邪魔してはいけないと思ったのか長居せずにすぐにいなくなった。

 そして夜は更けていき、煉魁も寝室で寝入ったことを気配で感じ取った。

(今よ)

 琴禰はムクリと起き上がると、人型に切り取った白い紙を取り出した。

 祓魔一族の最も得意とする術式、式神だ。

 紙に力を込めると、小さな人型の紙は、どんどん大きくなり人間の姿となった。そしてその姿は琴禰そっくりだ。

「あなたはここで寝ていて」

 琴禰の形をした式神は返事をすることなく、布団に潜り込み目を瞑った。

(式神は喋れないけれど、寝ているだけなら気付かれないでしょう)

そして琴禰は自分の気配を完全に消し、部屋を出て行った。

外に出る前に、厠で胃の中のものを全て出し切った。強烈な吐き気はおさまったが、まだ頭は朦朧としている。体の中に毒が吸収されてしまったらしい。しばらく引きずりそうだが、こうもしないと煉魁の目を欺くことはできなかった。

(ごめんなさい、煉魁様)