吐いたら楽になることは分かっているが、楽になってしまっては計画が潰れる。

 水仙には毒がある。猛毒なのは球根で、葉はそこまで毒性はないと思っていたが、実際に口に入れると気が飛びそうになるくらいの苦しさだった。

「大丈夫だ、琴禰。俺が今、楽にしてやるから」

 煉魁は琴禰の頭に手を添えると、ポウっと温かい光を出した。

(え⁉)

 これに困ったのは琴禰だった。治されては意味がない。煉魁は治癒の力も使えることを失念していた。

「完治まではいかないが、だいぶ楽にはなっただろう?」

 琴禰の額に浮かんでいた大粒の汗は消え、はち切れそうな頭痛も弱まった。

「煉魁様……」

「うん、ゆっくり休め」

 煉魁はとても優しい表情で琴禰の頭を撫でた。強烈な吐き気と頭痛がおさまったら、急激に眠気が襲ってきた。

 瞼を閉じると、安心したように煉魁と侍医は部屋を出て行った。

 本当に寝てしまっては、待ち合わせ場所に行くことができないので、気力で起きていた。あとは時間を見計らって外に出るだけだ。