試されているような気がした。琴禰の真意を。

 煉魁を騙して、澄八の元へ駆けつけることができるのか。

(どうやって煉魁様の目を盗み、澄八さんの元へ行こう)

 琴禰は庭園に植えられている草花に目をやった。鮮やかな黄色の水仙の花が風にそよそよと揺れていた。

(これだわ!)

 琴禰は意を決し、水仙の葉をちぎった。


「琴禰! 大丈夫か⁉」

 琴禰の体調が優れないと聞いた煉魁は、仕事を放り出して宮殿へと駆けつけた。

 いつも二人で寝ている寝室ではなく、宮殿の端にある畳敷きの小部屋に布団を敷いて、琴禰は横になっていた。

 額には大粒の汗をかき、呼吸が乱れている。とても辛そうな様子に、煉魁は胸を痛めた。

「一体琴禰に何があった⁉」

 あやかしの侍医に煉魁はきつく問う。

 白い髭をたくわえた侍医は、ふさふさの髭を所在なげに撫でながら言った。

「それが理由はわからないのです。食中毒に似た症状なのですが、琴禰様と同じ食事を召し上がった方々はなんともないので、考えられるとしたら毒を盛られたか」