澄八との結婚を匂わせれば、琴禰は喜び勇んであやかし王を倒すと思っていた。

 嫌々、あやかし王と結婚したと思っていたが、あやかし王を見つめる琴禰の顔は、まるで恋する乙女のように幸せそうだった。

 最初は反対されていた二人の結婚も、祝福するような雰囲気になっているという。

 二人の仲睦まじい様子が周りを変えた理由のようだ。

 そして、澄八はようやく、ある一つの仮説に辿り着く。

(琴禰は、あやかし王に恋をしているのではないか)

 そう考えると、全ての辻褄が合う。

 殺す機会は山のようにあるのに、決行しない理由。

 あやかし王より優位な立場にあるはずなのに、なぜか負けているような気持ちになること。

 苛立ちや悶々とする気持ちの背景には、琴禰の裏切りが影響しているのかもしれない。

(血の契約を破るつもりか)

 澄八は段々と怒りが募っていった。

(もしも裏切るつもりなら命はないと思え)