琴禰が、あやかしの国に行くときに作った糸のように細い道を登り、命からがらやってきたのである。

 当初は祓魔五人衆であやかしの国に乗り込む算段だったが、澄八以外は途中で力尽きた。

 澄八も、琴禰と血の契約を結んでいなければ辿り着くことはできなかっただろう。

 永遠に続くかのように思われた糸を辿って登る作業は、凄絶な鍛錬のようだった。

 力尽きた者たちは落ちていったが、下には結界を敷いていたし、元々の力が強いので死ぬことはないだろう。

 彩雲に輝くあやかしの国を真上に仰ぎ、下界を見下ろすと、まるで人間界が地獄のように汚れた世界に見えた。

 厄災の元凶であるくせに天上の美しい場所に住んでいるなど図々しい奴らだ。

 一刻も早く殲滅し、人間界に平和を届けてやりたい。

 そうすれば自分は英雄となり、祓魔で一番の権力者になれるだろう。

 人々から崇拝され、富も権力も手にした自分の姿を想像した澄八は、口元を綻ばせた。

 しかし、なかなかその日はやってこない。