澄八は苛々していた。

 あやかしの国に来てから一週間が過ぎていた。その間に体力も回復し、人間界に戻れる日も近い。

 それなのにも関わらず、琴禰は一向にあやかし王を討つ気配がないからだ。

 機会は山ほどあるはずだった。あやかし王は琴禰に虜で隙だらけだ。

 寝ているあやかし王の心臓を一刺しすれば全てが終わる。

 あやかし王の力は強大で、命を奪える者などこの世に存在しないと思われているほどの絶大な権力者だが、唯一の弱点は琴禰だ。

 琴禰ならば殺気を完全に消し、屈強な体に一刺しを加えられるほどの力を持っている。

 祓魔一族の宿願がついに果たされる時がきたにも関わらず、肝心の琴禰が何も動かない。

 このままでは何も起こらずに人間界に追い返される日がきてしまう。

 焦る気持ちが、澄八の苛々を助長させていた。

 澄八が、あやかしの国に来ることになったのは、琴禰の様子を探るためだった。

 血の契約を結んでいるので、琴禰が死んでいないことは澄八には分かる。