琴禰が自分のことを今でも好きだということを疑ってもいないらしい。

 自信過剰な態度や言い方は、煉魁と似ているところがあるが、澄八の場合は嫌悪感が凄かった。

 積極的で愛情表現豊かな煉魁には、相手を思いやる優しさがあるが澄八にはまるでない。

 自分が一番で、驕り高ぶっている。

 けれどここは、澄八の勘違いに乗っておいた方がいいのかもしれない。

 煉魁との平穏な日々を守るために。

「そう……ですね、嬉しいです」

 嘘をつき慣れていない琴禰にとって、これが精一杯だった。

 作り笑いを浮かべるもぎこちないし、言葉も緊張で少し震えている。

 だが、澄八は疑うことなく、満足気な笑みを見せた。

「いい子だ。僕たちの未来のため、そして何より祓魔の永劫の繁栄のために頑張るんだ」

 澄八は琴禰の頭を撫でた。

 寒気がする。正直、殴られた方が気持ち的には楽かもしれないと思った。

 すっかりいい気分になった澄八は、琴禰に背を向けて歩き出した。