澄八の目が輝き、嬉しそうに口元を綻ばせた。

 もちろん琴禰はそんなことをするつもりは毛頭ないが、結婚を持ちかけたのは勝機を探るためだ。

 澄八の見解は間違ってはいない。だからこそ、胸が痛い。

「どうして黙っているの? まさか、あやかし王に、本気で惚れたの?」

 胸がドクンと大きく鳴る。

「いえ、そんなわけは……」

「だよね、あんな化け物を好きになるわけがない」

 煉魁を化け物と呼ばれて、怒りを必死で抑える。手をぎゅっと握って屈辱に耐えた。

「琴禰は毎晩、あの男に抱かれているの?」

「な……なんでそんなこと」

 澄八は琴禰の顎を片手で掴んで上に持ち上げた。

「痛っ……」

「僕の質問に答えて」

 澄八の目は冷酷で、有無を言わせない迫力があった。

 目を逸らしながら頷くと、澄八は冷笑しながら手を放した。

「化け物と性交とは、目的のためとはいえ、よくやるよ」

悔しくて、握っていた手の平に爪が食い込む。

 どうしてこんな男を好きだったのだろうかと自分の見る目のなさに嫌気がさす。