琴禰は決意した。かつては初恋の人だったけれど、今ではまったく心が動かされない。

「煉魁様、この方は私の命の恩人であり、幼馴染でもあります。昔から無能で虐げられていた私を気にかけてくださいました。だからどうか、もう少しの間だけ、彼の滞在を許可してください」

「幼馴染か。余計面白くないが、仕方ない。もう少しだけだからな。それに、むやみに俺の嫁に近づくなよ、分かったな!」

「寛大なお心に感謝いたします」

 あからさまに敵対心と嫉妬心を露わにされているのに、澄八は飄々とした顔で礼を述べた。

「さあ、琴禰、行こうか」

 煉魁は琴禰の肩を抱いて、澄八から遠ざけようとした。

「待ってください、煉魁様。少しだけ彼と二人きりで話してもいいでしょうか?」

「二人きり?」

 煉魁は渋面を作って、もの凄く嫌そうな口ぶりで言った。

「故郷のことなど積もる話がありますので」

「俺が一緒にいたらまずいのか?」

「祓魔での出来事は、あまり煉魁様に知られたくないのです」

 琴禰は悲しそうに睫毛を伏せた。