そんなことよりも危惧しなければいけないことがあるわけで、これまた自分の器の小ささを感じて落ち込むのだった。

「そんなところで何をしているの?」

 突然後ろから話し掛けられたので、琴禰は飛び上がるように驚いた。

 振り向くと、さっきまで渡殿を歩いていたはずの澄八が琴禰の後ろにいた。

「え⁉ あ、えっと……」

 狼狽しながらあたふたしている琴禰に、澄八はぷっと笑いを吹き出す。

「見た目は随分変わったけど、中身は変わっていないようだね」

 人間界にいた時の琴禰は、おっちょこちょいで何をやらせても上手くできない無能だった。

 力が開花したにも関わらず、琴禰は今でも自己肯定感が低いし、煉魁と扶久以外まともに話したこともない。

 相変わらずの凡愚を指摘されたように感じて、気分が沈んでしまう。

 塞ぎ込むように俯く琴禰を見て、澄八は慌てて弁解した。

「悪い意味で言ったわけじゃない。僕は前の琴禰も素朴で好感を持っていたのだよ。不器用だけど真面目で精一杯頑張っている姿を見ていたからね」