澄八は目を細めて言った。澄八は人の良さそうな感じのいい笑顔をする。

 琴禰もずっと、澄八はいい人だと思っていた。

 しかし、腹の中に底知れぬ野望と冷酷さを持っていることを知ってしまっているので、澄八の笑顔を逆に恐ろしいと感じてしまう。

「どうする、琴禰。こいつをここから突き落としてもいいのだぞ」

 煉魁の発言に、澄八はぎょっとする。

「それはいけません! 澄八さんは私の命の恩人です。しばらく休ませてあげてください。私からもお願いします」

 琴禰は煉魁に頭を下げた。

 澄八が本当に、琴禰を心配してあやかしの国に来たのかは分からない。

 けれど、知り合いが目の前で死んでしまうのは耐えられない。

 あまり乗り気ではなかったが仕方ない。

「琴禰のお願いなら仕方ない。しかし、力が回復したらすぐに帰るのだぞ。長居は許さん」

「承知致しました、あやかし王」

 澄八は深々と礼をした。

 琴禰はこのまま何も起きないことを切に願った。