確かに祓魔一族が琴禰を殺そうとしてきた時、琴禰に選択肢を与えてくれたのは澄八だった。

 攻撃された最初の方はまだしも、髪がほどけて力が解放された琴禰にとって祓魔一族はもはや敵ではなかった。

 もしもあのまま戦っていたら、どちらが勝っていたかは澄八も分かっているだろう。

 でも、この場で真実を詳しく語る必要はない。

 むしろ、隠さなければならない事柄だ。

「琴禰、本当なのか?」

 青くなったまま俯いている琴禰に、煉魁が訝しそうに問う。

「……はい。私は澄八さんに逃がしてもらいました」

 真実は少し違うけれど、嘘は言っていない。

 琴禰の言葉に、澄八は安堵した表情を見せた。

 ここで琴禰が否定していたら、澄八の命はなかっただろう。

「では、なぜお前はここに来た」

 煉魁はまだ警戒を緩めなかった。

 どことなく邪な気を澄八から感じていたためだ。

「琴禰のことが心配だったからですよ。ちゃんと辿り着き、生きているのかどうか。でも元気そうな姿を見て安心しました。ここで帰りたいところですが、来るまでに力を使い果たしてしまったので、帰る力が残っていません。力が回復するまで、しばらく休ませてもらってもいいでしょうか?」