まさかの正体に、琴禰は言葉を失った。

 澄八は微笑を浮かべながら、ゆっくりと近付いてくる。

 琴禰と目が合うも、澄八は驚いている様子はなかった。

「止まれ。これ以上の入国は許可していない」

 煉魁に制され、澄八は大人しく従った。

「凄まじい魔力だ。もしやあなた様は……」

「俺は、あやかし王だ」

 煉魁の返事に対しても、澄八は笑みを絶やさない。いっそ、不気味なほどだった。

「やはり。琴禰の側にいるので、そうだろうと思いました」

「お前、琴禰を知っているのか?」

 琴禰は真っ青になりながら、立っているのがやっとの状態で煉魁に掴まっていた。

 小刻みに震え出した琴禰を見て、煉魁は先ほどの会話を思い出す。

「祓魔一族の者だと言っていたな。お前まさか、琴禰を殺しにきたのか?」

 煉魁から荒れ狂う殺気が上がる。

 もしも攻撃されたら、一発で澄八はやられてしまうのは明白だ。

「まさか! 僕は祓魔一族から殺されかけていた琴禰を逃がしてやったのですよ。つまり、琴禰を助けたのです。なあ、琴禰?」

 ふいに話しかけられた琴禰の肩がビクっと上がる。