「親にも兄弟にも愛されたことはありません。生まれてきてはいけない者として煙たがれていたのです。それがある日、力を開花させたことで一変しました」

 琴禰はゆっくりと、一言、一言、言葉を選ぶようにして吐き出した。

 辛い記憶だった。

「私は、祓魔を滅ぼす厄災だとのことです。一族たちは私を殺そうとしました」

 言葉の重みに煉魁はぎょっとした。

 予想していたとはいえ、琴禰の置かれた環境は、凄絶なものだった。

「そして私は、命からがら逃げだして、ここに辿り着きました」

 琴禰の瞳から、美しい涙が一粒零れ、それが煉魁の左手に落ちた。

 たまらない気持ちになって、煉魁は琴禰を後ろから強く抱きしめた。

「最低だな、そいつらは。琴禰を殺そうとするなんて、万死に値する」

 煉魁から本気の殺気を感じたので、琴禰は慌てて言った。

「仕方ないのです。私は生まれてきてはいけない存在だったのですから」

「そんなわけないだろ!」

 煉魁は珍しく怒気を強めた。そして、琴禰の体を半回転させ、正面から向き合うと、琴禰の顔を両手で抑えた。