「煉魁様はいつも何をされていたのですか?」

「公務を放り出し、釣りに行っていた」

「え……」

 王がそれでいいのだろうか、と琴禰は真面目に考える。

「そうだ、琴禰も一緒に行こう!」

「今からですか? 仕事は大丈夫なのですか?」

「ああ大丈夫だ。さあ、行こう!」

 承諾の返事も聞かずに琴禰を横抱きにして、飛び立った。

 自分本位の強引なところが、琴禰にはまったくない部分なので、輝く星のように見えた。

 仕事を放り出すことも、それについて悪いとも思っていない闊達(かったつ)さも、琴禰の性格とは正反対だ。

 他人からの目を過剰に気にしてしまい、怒られることに怯えていた琴禰にとって、煉魁は眩しいくらい堂々としていた。

 そして、やる時は誰にもできない凄い仕事をやってのけるからこそ、多少の怠慢は許されてしまうところも憧れる。

 陽の光に引き寄せられるように、恋慕の心に囚われていた。

 あやかしの国の端に着いた煉魁は、雲の上に降り立った。

 琴禰を下ろすと、雲の中に隠していた釣竿を探し出した。