昼休みになると、椅子を引きずる音や話し声があちらこちらから聞こえてきた。

 鞄からお弁当を取り出し机の上で開いたものの、食欲は無かった。

 ぼんやりとお弁当を眺めたあと、蓋を閉めて包みに戻した。

 美香の方を向くと、尾田くんと高橋くんと麻衣子が談笑しているのが目には言った。

 少し茶色い髪が目にかかった高橋君と目が合った。

 なんとなく見ていてはいけないような気がしたので、咄嗟に視線をそらし正面の教卓を見た。

 ふと、中学の時の事を思い出した。

 あの頃には、もう戻りたくない……。

 忌まわしい記憶が頭の中に充満してくる。

 あの時、美香が声をかけてくれなかったら。

 考えないようにしようとすればするほど、じわじわと過去の記憶が滲み出てくる。

 もやもやした熱が頭の中に充満してきた。

 じわじわと染み出る記憶を必死に押し戻そうとしていると、何かがスーッと首筋を伝っていった。

 その感触が腹部の方へ降りて行くと、唇と指先にかすかな震えを感じた。

 額にジワリと汗が滲んでくる。

 あれ、気分が……ダメだ……保健室行こう……あれ……。

 体に力が入らない。

 震える手を机について、重い体を押し上げるように立ち上がろうとした時、ぐにゃりと視界が歪んだ。