太陽の位置が高くなる頃に作られた、忙しなく働く人々へのひとときの安らぎ。

チャイムと共に席を立っていった皆とは違い、その音を無視して咲はデスクの上に積まれた資料と格闘していた。

「高宮チーフ、すいませんお先です。」

同じくチャイムを無視し続けていた男性社員も諦めて席を離れていく。

ふと時計に目をやると、既に休憩時間が30分程過ぎていた。
咲はふうっとため息を吐いて先ほどの男性と同じ場所へと向かった。


食堂では仕事から離れた解放感からか、あちらこちらで話に花が咲いている。

適当に空いている席に着いて両手を合わせると、近くの席から高めの声が複数聞こえてきた。

「工藤君のプレゼン、上手くいってるのかなー?」
「上手くいったら打ち上げだねー。」
「それ、ただ工藤君と一緒に飲みたいだけでしょ!」
あはははは!と、女性特有の笑い声が響く。

『そうか…皆で打ち上げに行くんだ…。じゃあ何も心配することないわ。』

咲は必死に考えた断りの言い訳を、暖かいお味噌汁を啜りながら白紙へ戻した。