外は、灰色。
朝日が街に色を付け始めている…はずなのだが、今は厚い雪雲に覆われていて、見慣れた街並みが濃淡だけで描かれている。
幸平がそんな景色をぼんやりと眺めていると、起き抜けの身体に響かせるような音が流れた。
流行りの歌ではない、どこか懐かしいメロディーを聞きながら幸平は携帯電話を手に取る。
幸平は、業務的にこなした咲とは違い素早く返信すると、折りたたみ式の携帯電話を優しい笑顔と共に閉じた。
そして真っ直ぐに窓の外の灰色の世界を見つめると咲と同じ様に、
「『ゆき』…」
と呟いた。
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