外は、白銀。
昨晩から降り続いた雪が朝日を受けて光を放つ。

「寒っ…。」

高宮 咲(タカミヤサキ)は起き抜けの身体で窓を開けて呟く。
一人暮らしにも慣れてきた頃だが、この土地の冬の寒さには未だに慣れない。
生まれ育った愛知県から、ここ宮城県・仙台市に転勤になったのは半年前の暑い真夏の時期…

と、感傷に浸りそうな頭を左右に振り払い、咲は窓を閉めた。

その次にする行動は、いつも決まっている。
《おはよう。こっちは今雪が止んでるみたい。そっちはどう?》

咲が転勤する頃から付き合い始めた真喜多 幸平(マキタコウヘイ)へのおはようメールだ。

だがそれを咲は業務的にこなし、折りたたみ式の携帯電話をため息を一緒にして閉じた。

そして真っ直ぐに窓の外の銀世界を見つめ、
「『ゆき』か…」
と本日二度目の呟きを洩らした。