彪牙くんに突き放されて悲しくなった私は喜多川先輩との思い出の屋上に行った。

ガチャ

「えっ?美羽ちゃん?」

ん?私の名前?

ってこの声って…


「喜多川先輩っ!」

「…どうしたの?美羽ちゃん。何かあったの?」

ああ…喜多川先輩の声を聞いたら安心しちゃった。

ダメだよ。美羽、泣いたら…。先輩がびっくりしちゃうでしょ?

でも…

「うぅ…先輩…。」

ダメだと分かっていても…先輩が目の前にいたら…

感情が溢れ出てくる…。

「美羽ちゃん。おいで。」

「先輩っ…。」

ギュッ

「何があったの?美羽ちゃん。ゆっくりでいいから話してごらん。」

私は先輩にさっきの出来事を話した。

「そっか…そんなことが。」

「…じゃあ、美羽ちゃんは星野さんと仲直りしたい?」

「彪牙くんと仲直り…?」

…。改めて言われるとどうなんだろう。


正直言うと、私は彪牙くんが怖い。

最初に怖いと思ったのは…確か小学校5年生のときだった。

あるクラスの男の子が私に告白私してきたことがあった。

私は初めての告白だったから、なんて返していいか分からなくてとりあえず返事を保留にしてもらった。
  
一晩中考えて私は断ることに決めた。

翌日学校に行っていざその男の子に伝えようと思ったけど、その日、その子は学校に来なかった。

その翌日も翌日も…。

私は思いきって先生に聞いてみた。

すると、先生はこう言った。

「あー、田中君は死にました。」

私は先生の言っている言葉の意味がわからなかった。

「せ…んせ?今なんて…?」

「えーと、ですから田中君は自殺しました。」

やっと状況を理解した私は思わず

「何でですか!!?」

「んー、理由は分からないけど、少なくとも四日前には死んじゃったらしいよ。」

今思えばよくそんなに話してくれたと思う。

普通はそんなことを教えてくれる先生はいない。

四日前…私が田中君から告白を受けた日だ。

でも普通告白した日に自殺なんてするんだろか?

私はどうしてもそのことが気になり自分なりに調べてみることにした。

そしたら、ある事実にたどり着いた。

それは、ある女子の証言だった。

その女の子はこう言っていた。

「あ…のね。今から四日前に見たことを言うけど絶対に星野さんには言わないでね。お願い。」

星野さん…彪牙くんのこと?

「分かった。」

私が頷いたのを確認して姫野さんは話し始めた。

「えっと、霧崎さんは確か田中君が自殺した原因…が知りたいんだったよね?」

「うん。」

「結論から言うと、原因は星野さん…だよ。」

……。彪牙くん?

「…どういうこと?」

「実は、今までに私の学校何人も転校していったでしょ?」

「確かに…。」

私の学校は転校してしまう生徒が多かった。実際、17人が転校した。

他の学校に比べたら多いとは思ったけど、

「その人たちは全員…霧崎さんを好きだった人たちだよ。」

えっ?私を好き…?

「どういうこと…?」

「その人たちが告白しようとすると、星野さんに呼び出されるの。」

「…。彪牙くんに?」

「そう。私も知らなかった。四日前の田中君と星野さんの話を聞くまでは。」

一体…何を聞いたの?

「そこで私が聞いたのは…星野さんが田中君を脅しているような言い合いだった。」

お、どす…?

「もう一度言うけど、星野さんには絶対に言わないでね。」

この目…必死な目…。

「うん、約束するよ。」

「じゃあ…」

「ちょっと待てよ。」

つっ!?この声って…

「姫野…さっき何を言おうとした?」

この声って…彪牙くん…?

声の主が分かった瞬間、思わず姫野さんを見ると、

………顔は青白く冷や汗がダラダラ出ていた。

「おい、姫野!」

「ひゅ、彪牙くん…。姫野さんは悪くないの。ただ私がっ!」

「美羽は黙ってろ。」

こ、怖いよ。彪牙くん…。

「わ、私は何も…。」

「ふーん。じゃあこの話もういいよな?美羽、帰ろーぜ。」

「い、いや。私はまだ姫野さんと話したいことが…。」

「あ?姫野は話してねぇって言ってるぜ?」

「そ、それは。」

姫野さんの顔を見ると、必死に「お願い何も言わないで」と訴えていた。 

「な…んでもない…。」

私がそう言うと姫野さんは、まるで命が救われたような…そんな表情になった。
 
「ふーん、早く行こうぜ美羽。」

「う、うん。」

私はそう言ってとりあえず家に帰った。

その時の私は、また彪牙くんに内緒で会って聞こう。などという甘い考えを持っていた。

まさかこんなことになるとは思わずに…。

翌日

ハアッ、ハアッ

私は彪牙くんが私の家に来るより先に家を出た。

そしたら彪牙くんが来る前に姫野さんと話せる!

ガラガラガラ

「姫野さんっ!いる?」

………。

あれ?おかしいな。姫野さんはいつも朝一番に来ていたはずなんだけどなぁ。

風邪…かな?

昨日、顔が青白かったし…

ガラガラガラ

「おはよう。」

あっ!姫野さ…ん?

ち、がう…この声は

まさか…、、

「ひ、彪牙くん…?」

ど…うしてここに?

「ひどいな、美羽。俺を置いて行くなんて。」

「ご、ごめんな、さい…。」

「まあ、いいよ。」

「それより、もうこんなことすんなよ?」

「わ、わかりました…。」

キーンコーンカーンコーン

「あー、急だか今日は折り鶴を作ろうと思う。」

折り鶴…?

「何でですかー?」

「急ですが姫野景子さんが亡くなりました。」

えっ?姫野さん…が?死んだ?

「せ、んせい。なんで死んじゃったんですか?」

私はあまりクラスで発言はしないほうだけど、今の言葉は自然に口に出た。

「あー、えー、自殺です。」

じ…さつ?

なんで…

「で、では作りましょう。」

それからのことはあんまり覚えてない。

そして、私は全身が冷たくなる感じがした。

怖い…怖いよ…

彪牙くんって一体何者なの…?

そして、どうしてみんな死んじゃったの…?

だれか、教えて…。