「高校の同窓会、どこで?」
「この近くのホテルです」

 そこは誰もが知る有名なホテルだからか、名前を聞いた途端に彼がウンウンとうなずいた。
 笑顔で会話をしながら私の髪を器用に結っていく。
 素人の私には、どこの部分をどう持ってきて編み込んでいるのかわからないくらい複雑なのだけれど、手順が頭に入っている快永さんの手さばきは迷うことなくスムーズだ。

「久しぶりに同級生と会うの?」
「はい。卒業以来会っていない子とは七年ぶりです。私、高校生のときは目立たなかったから、こんなにオシャレして行ったらみんな驚くかも。って、今も普段は地味なんですけど」

 快永さんと会話できるのがうれしくて、勝手に口がペラペラと喋り出す。
 隣の席にいる女性客が顔をしかめて私を見ているのに気づいた。
 うるさかっただろうか。……いや、違う。おそらくだが、快永さんと仲良く喋るなと牽制している。

「めちゃくちゃかわいくなったね」

 髪飾りを付けて、最後に前髪を整えてもらった。
 合わせ鏡で見えた私の後頭部には、芸術作品のようなボリュームたっぷりのアップシニヨンが出来ていた。エレガントで本当に美しい。

「うわぁ、ありがとうございます。素敵です!」

 ペコリとおじぎをして席を立ち、レジカウンターのほうへふたりで移動する。

「こんなにかわいくなったら……ちょっと心配だな」
「……え?」