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 二週間後の日曜日、私はクローゼットから出したパーティードレスに着替えて身支度を整えた。
 ドレスは落ち着いた感じのワンピースで上品なピンク色だ。顔色が明るく見えるし、デコルテ部分は透け感があって大人っぽい。
 いつもより時間をかけてメイクを施したあと、私は再びサンドリヨンを訪れた。

「いらっしゃいま……せ」
「え?!」

 入口の扉を開けると、そこには私を待ち構えるように快永さんがいたからビックリして変な声が出てしまったのだけれど。
 ポカンと口を開けて視線を上下に移動させていた快永さんも、私に負けず劣らず驚いていた。
 目を丸くしている彼もやっぱりカッコいいのだから、この人は本当にパーフェクトだ。

「その格好、どうしたの?」
「えっと……今日はこれから高校の同窓会があるんです」
「そっか。だからそんなにかわいいワンピースを着てるんだね」

 顔が熱くなってきた。褒められると思っていなかったから心臓に悪い。
 でも今の“かわいい”の部分だけは、スマホに録音して永久保存しておきたいくらいうれしい。

「か、快永さんこそ、どうしたんですか? ほかの予約が入ってたんじゃ……」
「ああ、キャンセルになった。そしたら杷子ちゃんの予約が入ってることに気づいて」

 ドキンと大きく心臓が跳ね上がった。だって彼は今、私の名前を呼んでくれたから。
 しかも“花咲さん”ではなく“杷子ちゃん”って下の名前で。
 ほかの人からすれば、たったそれだけのことなのにと笑われるかもしれないけれど、私は胸が痛いくらいにときめいた。