「あ、そういえば。話変わるんだけど、同窓会の案内って杷子のところにも来たよね? 行くでしょ?」

 凉々花が言っているのは高校の同窓会だ。

「うん。ハガキが来てるって実家から電話があったから転送してもらった」

 ほかのクラスも合同での開催だと書いてあったのだけれど、凉々花が行くなら私も参加しようと考えていた。
 卒業から七年。懐かしい顔ぶれに会えるだろう。

「あ! その日、美容院で髪をセットしてもらう!」
「はぁ……杷子はなんでも快永さんと結びつけちゃうんだね。本当に重症」

 たしか会場はサンドリヨンと同じ駅にあるホテルだったはず。それなら立ち寄って彼に髪を結ってもらえると気づいたのだ。
 パンケーキを口に入れて咀嚼しながらあわててスマホをいじる私を、凉々花はあきれた顔をしたまま見守ってくれた。
 私はいつも施術が終わって支払いをするときに予約を済ませて帰るので、こうしてネットから急遽予約を入れることは珍しい。
 同窓会は二週間後の日曜だが、彼の予定は空いているだろうか。

「……ダメだぁ。快永さんの予約は全部埋まってる」

 そんなことだろうと予想はしていた。カリスマ美容師である彼は、いつも先のほうまで予約が取れない状況だから。

「残念だね」
「仕方ない。無指名でヘアセットの予約をしておこうかな」

 たとえ快永さんに担当してもらえなくても、確実に店にはいるはずだ。
 だったら、少しくらいは彼の姿を眺めていられるかもしれない。
 そこまでして会いたいのかと、凉々花は心の中でまたあきれているのだろうな。
 でも、器用にハサミを動かしてヘアスタイルをデザインする彼は魔術師みたいで、誰もが見惚れるくらいカッコいいのだ。