朝8時15分 少し開いてる教室の窓から入ってくる少しの風にふんわりと揺れる髪の毛。その時間に本を読むのが毎日の楽しみだ。本を読むと悩みも大変なことも全て忘れられる。
進路の事も勉強の事も、そして恋のことも。そんなことを考えていると毎回話しかけてくる人がいる。有野 美沙。私の親友だ。どんなことも相談して相談される仲。私は元々遊ぶのがあまり好きではないから2人っきりで遊んだのは美沙くらいだ。しかも10回以上。そのくらい私が心を許している人だ。だけど私が本を読んでいる時くらい空気を読んで話しかけないでほしいなーとは思う...そんな気持ちを抑えていつも通り返事をする。「──ってば!おーい!ゆい!」
「なに?」
「やっとだよ。」
「ごめんごめん」このくだりが日常。少し前まではこのくだりも面白く感じた。少し前までは。けど今は面倒くさいとしか思えない。
「で内容はなんだっけ?」
「修学旅行のまとめの発表のはなしじゃーん!」
「結局、美沙がスライドで私が動画作るって決まんなかったっけ?」
「そうなんだけど、スライドのデザインこれでいいと思う?」
「あーいいんじゃない!可愛いよ!」
「まじ!?じゃあこれにする!」
この話、私の読書の時間を削ってまでする話か?と思いながらも返事をする。美沙が空気を読むのが苦手で人の気持ちを考えられないって悩んでいるのを知ってるけど、どうにかならないのかなって思う。私が注意をするのが1番いいのだろうけど私は人に嫌われるのと自分の気持ちを伝えるのが1番嫌いだから言うのが難しい。
こうして今日も少しイラつきながら1日が始まる。そしていつもはこれで終わるのだけど、今日はいつもに増して最悪な事が起きた。
「これ見て!」
「えーすご!」
うわって声がでかけた。
美沙が出来たスライドを賢太君に見せたのだ。しかも賢太君が覗き込むような形で。美沙との顔の距離は10cmもなかったように見えた。
賢太君は私の好きな人だ。浦野 賢太。頭が良くて性格もいい。人当たりもよく人気者だ。それに私が知ってる中で賢太君の事が好きな人は5人はいる。よくあるモテ男だ。
そんな賢太君と美沙はとても仲がいい。美沙は男女という区別が嫌いで男子だから話しにくいという感情がこれでもかって言うほどない。だから男女問わず仲がいいし好かれる。けど空気が読めないので自分のやりたいことだけをやり、人にぶつかっても気にしないので数人には嫌われている。
賢太君は美沙に気を許しているらしく、よく話している。
それが私はどうしても妬いてしまう。そんな自分がどんどん嫌になっていくと同時に美沙に対する嫉妬が混じりあって美沙も自分もどんどん嫌になっていく。私が話しかければいいのだろうけど、私が賢太君の事を好きなのがクラス中にバレてしまってから今まで以上に話しかけにくくなってしまった。ちなみにバレてしまったのは木ノ島 英斗というクラスの男子で1番仲がいいやつの仕業だ。
英斗はクラス1の陽キャでうるさい。けど陸上が出来すぎて許されてる感じだ。陸上の強さで言えば県1位はともかく、全国駅伝の中学生の部で区間賞も全体のトップも取っているレベルだ。そんな英斗を誇りに思うのも束の間、英斗は他人の恋バナが大好物。特に私の恋バナは超大好物だった。だからクラス中にバレてしまったと。
何してくれたん!?とも思うけど英斗と恋バナをするのも私の日常になっていたのでそれが無いと少し寂しいような感じもしなくも無い...?と思う。