「それじゃあ、
 ものすごく名残惜しい気持ちでいっぱいだけど、
 あなたたちは、そろそろ現実の世界に戻らないといけません」


 私も。
 名残惜しい、ものすごく。


「ブレスレットが緑色の場合、
 日付が変わる前に現実の世界に戻らないと、
 二度と現実の世界には戻れなくなってしまいます」


 驚いた、ものすごく。
 惺月(しずく)さんの言葉を聞いて。





 本当は。
 いたい、少しでも長く。
『心が呼吸できる世界』に。


 だけど。
 ある、タイムリミットが。

 それは、どうにもならない現実。



 今だけではない。

 これからも。
 ならない、向き合わなければ。
 どうにもならない現実と。
 ある、そういうときも。


「惺月さん、
 大変お世話になりました。
 それから本当にありがとうございました」


 名残惜しい、ものすごく。
 そういう気持ちを抱きながら。
 そう言った、私たち五人も。


 本当に感謝している、惺月さんに。
 伝えたかったから、どうしても。


「私は何もしていないわ。
 みんなの努力が実ったのよ」


 思った、改めて。
 惺月さんは本当に心の大きい人だと。


 そんな惺月さんに出会えて。
 本当に幸せ者。
 そう感じる、改めて。



「それでは惺月さん、
 お元気で」


「みんなも元気でね」


 惺月さんの言葉に。
 私たち五人は会釈をする。
 感謝の気持ちを込めて。