「……蝶々……?」


 窓の向こう。

 見えた、そこから。


 それは。
 優雅に飛んでいて。
 七色に輝いている虹のような蝶々。


「こんな色の蝶々、初めて見た」


 それは。
 美しい、あまりにも。

 そんな蝶々に引き寄せられるように。
 歩き出す、窓の方に。












 見たい。
 もっと近くで。

 強くなっていく、その思い。



 その思いを抱いたまま。
 たどり着いた、窓に。


 見る、近くで。

 そうすると。
 美しい、もっともっと。










 この蝶々を。
 窓越しではなく。
 見たい、直接。

 そう思い。
 開ける、窓の鍵を。


 そうして。
 窓を全開にして。
 見た、蝶々を。

 やっぱり。
 見る、直接。
 その方が。
 美しい、もっともっともっと。







 そう思いながら。
 見とれている、蝶々に。


 そうすると。

 蝶々が。

 えっ?
 消えた? 視界から。





 そう見えた。


 だけど。
 違っていた。

 蝶々は。
 下りて行っている、下の方へ。



 よかった、消えていなくて。

 そう思いながら。
 蝶々に合わせるように。
 視線を向ける、下の方へ。