彩珠(あじゅ)っ‼」


 戻ってきてほしい。
 一秒でも早く。
 空澄(あすみ)に。

 そう願っている、強く。


 そんなとき。
 戻ってきた、空澄が。

 空澄は。
 連れて行かれそうになっている私を見て。
 驚きのあまり。
 落とした、手に持っているペットボトルのジュースを。


「空澄っ‼」


 空澄の姿を見た私は。
 呼んだ、叫ぶように。
 空澄の名前を。


「彩珠っ‼」


 必死に走って。
 来てくれている、空澄が。
 私のところに。


「空澄っ‼」


 そんな空澄のことを。
 呼ぶ、精一杯の声で。





 お父さんは。
 見ている、驚いた表情(かお)で。
 私と空澄のことを。



 武藤さんと北山さんも。
 驚いたのか。
 止まっている、動きが。


 だけど。
 私の腕を掴んでいる力。
 変わらなかった、それは。

 だから。
 できない、逃げることは。


「彩珠っ‼」


 来てくれる、空澄が。
 私のところに。

 そこまで、あとわずか。