今もその時のこと思い出してはとても辛くなる。
できることなら、もう1度芽生に会いたい。
今すぐにでも芽生の側に行きたい。
ぎゅっと抱きしめたい。
君の涙を拭いたい。
「俺は大丈夫だから、泣くなよ」って君を少しでも安心させたい。
なのに、芽生のところに行けない。
そっちの世界に戻れない。
俺は、芽生になにもできない。
なにもしてあげられない。
ただ見守ることしかできない。
「私、私ね……」
溢れ出る涙をそのままに彼女はぽつりと胸の内を明かす。
「ずっと後ろめたかった。生きてることに対して」
13年間、誰にも言えなかった彼女の本音。
「どうして私が助かったんだろうって何度も自分を責めた。家を失って、住んでいた街も悲惨な光景になってて、終わりが見えない避難生活。とても大変だった。精神的にもきつかった。なにより、守くんがいないことが辛かった」
芽生のその言葉に、俺はなにも言えなかった。
彼女が1番辛い時に側にいてあげることができなかった自分がとても憎い。
「この世界で生きてる意味が分からなくなるほど、私にとって守くんは大切な人だったんだよ。できることなら、守くんと一緒に高校に通いたかった。一緒に歳を重ねたかった。守くんが大人になった姿をこの目で見たかった」
芽生の記憶に残るのは、いつまで経っても15歳の俺のまま。
今の俺も身長伸びるどころか中学生の頃の姿だ。
成長した芽生を、どこか懐かしげに見る。
中学の時の芽生は、よく笑う子で感動するようなことがあったらすぐに涙がでるような純粋な心を持っていて、拗ねたり、怒ったり、落ち込んだり、いろんな表情を見せる君が誰よりも可愛かった。
13年の時が経つと可愛いというより綺麗という言葉では言い表せられないくらい素敵な女性になった。
今では28歳。
看護師として働いていて、患者の治療と心のケアもしっかり行う芽生のこととても誇りに思う。