ぐるぐると、考え込みそうになった時。
「あ、でもそっかあ。莉乃には超かっこいい透夜様がいるもんね」
「……へ」
「うんうん。そりゃあもうあれ以上はいない。分かる」
「……」
会話が置いてけぼりなるなか、
無意識に、昨日彼の唇が触れていたところをさわる。
鎖骨あたりをなぞると、なぜか妙に安心した。
「……うん」
ぜんぜん、絆されてなんかいない。
まだ、完全に気をゆるせるわけではない。
だけど。
すこし、不安な気持ちが、治まった気がする。
ほんとの、ほんとに、少しだけ。
……ていうか私、また深月くんのこと考えてる。
「……実帆ちゃん、深月くん推しだったのに、他のイケメンに目を向けちゃうの?」
「うっ、痛いとこ突かれた……!」
「あはは」
さっきよりは周りを気にせず過ごせた昼休み。
時間は過ぎて、放課後。
「……お家の鍵が、ない」
緊急事態が、発生。