……まあ加えて、深月くんには"腹黒王子"という称号があるのだけれど。
名付け主は、もちろん私。
だけどうっかり口を滑らせたら、私はぱくっと一瞬で食べられてしまうかも。
昨日みたいにーー…
『……は、…あま』
「ーーっっ!」
なんで今思い出しちゃうの……。
べつに、あんなの怖かっただけ。
するどい瞳がすこしだけ熱を帯びていたことも、普段とは段違いにあまかった声も。
どこをどう取っても、いのちが擦り減る感覚を覚えただけだ。
「莉乃、どうしたの?」
「へ?なんで?」
「なんでって……顔真っ赤だよ?」
「っ、え……っなんでもないよ…!ちょっと熱いなあ?って!」
「そう…?まあ今日気温高いし……」
なんとか実帆ちゃんのあやしげな視線を乗り切って、ぱたぱたと熱くなった頬を冷ます。
なんでこんなに……。
昨日のことを意識しないようにすればするほど、頬の温度は上がっていく。