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その後の記憶はあいまいで。


気づけば、学校の外。


たぶん、近づいていた彼を押しのけて「っ帰る……!」と、言い逃げした……気がする。



すっかり暗くなってしまった夜道を、とぼとぼと歩いた。



「……はあ…」



さっきまでの出来事が、頭から離れない。



何も映していない、冷たい瞳。温度がなくて、凍っているみたいな。


普段の彼からはまったく想像できない、それ。



まさか"王子様"という彼の姿が、仮面だったなんて。



人には多少なりとも裏表は存在する。それは分かっていたつもりだった。


だけどまさか彼が、とは思いもせず。


まんまと思い通りに騙されていた、ということ。



両手を胸の前で重ねて、ぎゅ…と握る。



……あ、そういえば



『バレちゃったから仕方ないーー…絶対に言うなよ?』



答えずに、飛び出してきてしまった。