「……っ」
まだ可能性はある、と願ってすぐに身を潜めた……けど。
「ーーーそこにいるの柚原さんでしよ?」
逃げられない、そう悟った。
諦めて、しぶしぶ彼の前に姿を現す。
「っあ…えと、」
「鞄、取りに来たんだ?」
「…うん」
もしかしたら、彼は私がいま来たばかりだと思っているのかも。
それなら知らないふりをして、このまますぐに去ればいい。
さっさと取って、帰ろうと自分の机へと向かう。
彼は動くことはせず、そのまま立ちっぱなし。
……帰らないの?
そう言いたげな視線は伝わってるはず。なのに私に話しかけるだけで、帰る素振りは見えない。
その様子が、少しだけ怖いと思った。
慎重に、できるだけいつも通りに振る舞う。
いつも通りって…、私どんな風に接してた?
焦りが募って、途端に緊張がからだをかけめぐる。
そして、その決定となった言葉。
「ーーーねえ、見てたよね?」