『ずっと一緒よ、莉乃』
『あ、急に彼氏なんて家に呼ぶんじゃないぞ?お父さん悲しくて気絶しちゃうからな』
『あははっ、まだ私中学生になったばっかりだよ?』
……家族、か。
私にも、誰か心配してくれる人がいたらなあ……。
叶うはずのない願いは、心のなかで静かに消えて行く。
置きっぱなしの鞄を取りに行くために、階段からいちばん離れた教室へ向かう。
……やっぱり図書室に鞄を持っていかなきゃなあ。すぐに忘れちゃうんだけど。
この距離は正直めんどくさい。
廊下に響くのは、私ひとりの足音。
さすがにもう生徒は帰ってるか。
そう思ったとき、私のクラスの教室から誰かの声がした。
誰だろう、と扉から中の様子をのぞくとそこには。
「……深月くんと、……橋上さん?」
ひとりは見知った人。もうひとりはおそらく隣のクラスの美人だと有名な人だった。