「お前、この先ずっと一人で生きていくつもりか? それはさすがに寂しいって」
「そう、なのか?」
「そうだろ。誰かと一緒に生きていくのって、簡単そうで実は簡単じゃないんだよ。 色んな苦労があって、それを一緒に乗り越えていくから、人生楽しいんだと俺は思うけどね」
目の前に運ばれてきたもも肉の焼き鳥に手を伸ばす来栖を見ながら、来栖の言葉を思い浮かべる。
「お前の人生、きっとこれから楽しくなるな」
「え?」
「お前が結婚して幸せになってくれたら、俺にとってそれは一番嬉しいことだわ」
来栖はあっという間に焼き鳥を食べ終え、タブレットに手を伸ばし、メニューを見つめる。
「……結婚、した方がいいのかな」
「した方がいいと思うけどね、俺は。 俺なら結婚するけどね」
でも……もう少し考えたい。でもな……。
「まさか、年の差気にしてるのか?」
「まあ……」
「今時年の差なんて普通だよ。珍しくもないから」
いや、でもな……。俺はおじさんだろ?
「俺みたいなおじさんと結婚して、矢薙は幸せになれるのかなって、ちょっと思ってる」
「バカだなあ、お前は。 そんなこと気にしてたら恋愛なんて出来ないって。……その子の気持ちは本気なんだろ? だったら、真正面から受け取ってやるのがいいと思うけどね」