咲音は拳を握りしめると、再び口を開いた。

「アンタが私の母親でも、そうじゃなくても、私には関係ないから! アンタは、私の母親失格だよ。アンタみたいな人から産まれても、私は幸せになってるから」

「咲音、アンタ……」

 咲音は母親に向かって、「今まで母親として何も果たしてこなかったくせに、今更母親面して、なんなの? 借金があるから金をくれ?ふざけんなよ。アンタにやる金なんかない。……アンタに借金があったって、そんなの私には関係ない。 私の夫のことを悪く言うことも許さないし、これからだってアンタのこと、許すつもりないから」と、力強い表情を見せた。

「咲音……」 

「な、なんなのよ……」

「なんなのよは、こっちのセリフだから。今更母親面されて、いい迷惑なんだけど。 私の両親はたった二人。お父さんとお母さんだけ。……あなたは、私の母親なんかじゃない」

 それは、咲音の決意だったのかもしれない。 前を向くために、決別するために、咲音が一生懸命決意した証だと思った。

「確かに私は、あなたから産まれたかもしれない。……でも私を育てたくれたのは、お父さんとお母さんだから。 あなたじゃない」

「っ……アンタを産んだの……間違いだったかもね」

「ごめんね、親不孝な娘で。 でも……私はあなたと違って今が一番幸せだから」

「っ……」