次の日の土曜日、俺は矢薙の家に挨拶に来ていた。
そしてその日、矢薙の本当の母親が矢薙の前に現れたことを、矢薙は両親に話したのだった。
「えっ……お金を?」
「うん……借金があるって、そう言ってた」
それを聞いた矢薙の両親は、驚いていた。
「じゃあ、お金をせびるために……咲音の所へ来たってこと?」
母親は驚きを隠せないようで、動揺した表情を見せている。
「多分……そうなんじゃないかな、と思う」
「そんな……。まさか、そんなことが……」
「もしかしたら……また来るかもしれない」
「そう……。確かに手紙では、咲音に会いたいって書いてたの。 でもそれがまさか、お金のためだったらと思うと……なんかね、複雑な気持ちになるわ……」
それもそのはずだ。本当の母親だと名乗る人が現れて、しかも借金があって、お金を貸してほしいだなんて……。そんなの虫が良すぎる話だ。
「お母さんとお父さんの所にも……もしかしたら、あの人は来るかもしれない。そうなったら……」
矢薙の心配に気づいたのか、矢薙の母親は「大丈夫よ、咲音。……私たちなら、大丈夫よ」と矢薙に伝える。
「お母さん……こんなことになって、ごめんね」
「いいのよ、咲音。 あなたは、何も悪くないんだから」
「そうだよ、咲音。咲音は悪くないんだよ」