「うん。ピクニックしよう、先生」
「ピクニック……。まあ、矢薙がしたいことなら全然いいけど」
初デートがピクニック……。確かにピクニックなんて、あんまり行かないな。
一人だし、ピクニックに行きたいとも思わない。 誰かと一緒に行くからピクニックなのかも……だけど。
「じゃあ行こう、先生」
矢薙は俺の手を引っ張って歩き出す。
「そんなに急がなくても大丈夫だって、矢薙」
俺の手を握るように歩いている矢薙に、俺はそう言ってみたが、矢薙は「だって、嬉しいんだもん」と笑っている。
「そんなに嬉しいか?俺とのピクニック」
「嬉しいに決まってます! 大好きな人とピクニックなんて、嬉しさの極みでしかないですもん」
う、嬉しさの極み……? 若い子の言葉はよく分からないが、とにかく嬉しいということだけは分かる。
「とにかく嬉しいってことか?」
「そう。めっちゃ嬉しい」
終始ウキウキ気分の矢薙は、公園に着くなり大きめのショルダーバッグからレジャーシートを取り出し、芝生の上に敷き始める。
「レジャーシート持ってきてたのか?」
「うん。ここで先生とお弁当食べたいから」
まさかレジャーシートまで持ってきてるとは、思ってなかった。
ちゃんと用意……してたんだな。
「先生、ここ座って」