それでも、 こんな関係はもう終わりにしたいから。 彼の上着のポケットに忍ばせたリップのことを考えながら、ホテルを後にする背中を窓越しに見送る。 彼が誕生日にくれた淡い桜色のネイルで彩る指に、頬を伝って冷たい滴がこぼれ落ちる。 私にお姫様のようなピンクは似合わない。 私は所詮脇役。 ヒロインにはなれない。 ならばせめて誰にも好かれない悪女になりたい。 そう、 シンデレラでいう意地悪な継母のような悪女に。