第2節


ーしあわせー






「拓海くん、わたしお腹すいてきちゃいました。どっかでサービスエリアでも寄りません?」
「いいよ。その代わり璃恋が買ってきてね」
「お安いご用です」


指名手配中だというのに、俺たちの会話は何一つ変わらない。


前々から覚悟はしていた。


まだこの業界に入って間もない時は本名を使っていたし、自分の身を省みなければ俺の個人情報くらい簡単に入手できる。


もし指名手配されたら自分で銃を使って終わりにしようと思っていた。


追われるのは慣れていないし、自分から出頭するのはかっこ悪い気がした。


なのに、今回ばかりは少しタイミングが悪かった。


あと一年早ければ気兼ねなく死ねたのに、一番望ましくないタイミングだった。


ーー守りたい人が、出来てしまったから。


俺の命を捨ててでも、幸せに生きて欲しい人が出来てしまったから。
だから逃げて、と言ったのに。