傘を脇で挟み、ネームプレートがライターで燃やされる。黄色い枠組みがあっという間に黒く染まると、あの子の名前が燃えていく。
 ゆらりゆらりと立ち上がる私は呆然とし、狂気の笑みを浮かべる女の行動を理解できずにいた。
 あの子からもらったはずのあたたかい思いが汚されていく。それでも私の凍りついた感情は、表情に一切の感情を乗せてはくれなかった。
 けれども――


「がふっ!」


 私の右腕は動き、気づけば女の顎を跳ね上げていた。
 顔を押さえる化物から少しだけ曲がってしまった傘を取り上げると、足払いを掛け硬い地面へと転ばせる。


「ぐっ! ふくく、私に一方的にやられてたくせに、こんなことして調子に乗ってますねぇ……ここからはお稽古じゃなくて――」
「個人的なレッスンとでも言いたいの?」


 起き上がろうとする顔を力任せに踏みつけ、後頭部を強打させる。