「……?」


 おかしい。机に置いていたはずの傘が無い。誰かが持ち出した?
 すぐに自室を飛び出すと、廊下で歩いていたメイドを捕まえる。


「少し聞きたいの。私の自室に置いてあった黄色い傘を知らないかしら?」
「えっ……あ、はい! そういえば先程――」


 端的に聞くと、どうやらあの女が持ち出したようだ。
 これまでの態度から犯人の目星はついていたが、あまりに嫌がらせがすぎる。もう傘としての機能を失ってしまった物ではあるが、私の大切な物であることには変わりない。他人の目からはゴミにしか見えないかもしれないけれど。
 家内を探し、キッチンにてようやくその女を見つける。