そうして後ろの棚にあった木箱を私に手渡す。

「これは?」
「三カ月前、ミレーヌ様がやってきてこれを作るように依頼された。アリス、君の魔導具だ」

 それはネックレスになっている小さな指輪だった。
 私はそれがお母様の着けていた指輪だと気づいて、ふいに愛おしくなって喉の奥がツンとした。

「お母様……」

 久々に再開したような気がして、そして元気だった頃のお母様を思い出して目が潤んでしまう。

「ミレーヌ様が亡くなったことは知っている。彼女から死ぬ直前に魔法で作られたメッセージが届いた」
「お母様が……」

 私は木箱からそのネックレスを取り出してつけてみる。
 サイズもぴったりでそれでなんだかあたたかい感じがした。

「お母上からあなたへの贈り物だ」
「うぅ……ありがとうございます、イルゼさん……」

 私はお母様からの贈り物を抱きしめて一晩中泣いた──。