「ようやく到着したのか、まったく」

 殿下はため息をつきながらゆっくりと剣をしまって私の手を引きながら、イルゼのもとへと歩いていく。
 すると、イルゼさんのもとに一人の兵士が跪いて報告する。

「イルゼ王子、ヒュード子爵と護衛兵、そして海賊どもの捕縛が完了しました」
「証拠の文書は?」
「無事です」
「よくやった」

 私は自分の耳を疑った。
 聞き間違いでなければ、今イルゼさんに対して『王子』って……。
 どういうことなのか、と訪ねようと殿下の方を向くとふっと笑って私の頬に両手を添えた。

「ふふ、混乱するアリスも可愛い! イルゼは見ての通り、セラード国第三王子だよ」
「……えええええーーーーー!!!!!!!!!」

 私の叫びが港中に響き渡った──。



 こうしてセラード国での最初の日はとんでもない大騒動に巻き込まれて終わった。
 ヒュード子爵と海賊船長マスカードは牢に入れられて裁判を受ける予定なのだというが、イルゼ王子曰く牢からは一生出られないだろうとのことだった。
 それほど今回は国家を巻き込んだもので国益を大きく損ねたということで悪質性も高かったそう。