ある港にある倉庫に私たちはやってきていた。

「ここは……?」

 私の問いにイルゼさんは手をポケットに入れてじっと倉庫を見つめながら答える。

「国営の穀物倉庫だ、表向きはな」
「表向きは?」
「ああ、恐らく文書を偽装しているやつらがここを根城にして海賊の支援をしている」
「海賊に手を貸しているってことですか?」

 イルゼは小さな声で「ああ」と呟くと、私に詳しい事情を説明してくれた。
 この倉庫の管理者の納税申請が怪しく、国家が調査した結果、海賊との癒着が判明したのだという。
 そうして恐らくここに近日は海賊もいるはずなのだという調査結果が出たそう。

「でも、どうして……」

 私が言葉を続けようとした時、殿下が私の口元を抑えた。
 何が起こったのかと思っていると、倉庫の中から数人出てきたところだった。

「イルゼ、あいつらで間違いないのか?」
「ああ、あれはこの倉庫の名簿上の管理者であるヒュード子爵だな。それで、あそこにいるのが実質上の管理者の海賊の船長マスカードだな」