「す、すみません! あの、お礼はいいので、あの、イルゼさんを……」

 そこまで口に出して私は慌てて手で口を押えて言葉を止める。
 そうだ、さっき男に『イルゼ師匠の形見』って言ってた。
 それが本当ならもしかして……。

「イルゼ師匠へのお客様でしたか。ここではなんですし、よかったらうちのアトリエに案内をします。そこでお話をしましょう」

 私と殿下は互いに目を合わせて頷いた後、男の子についていくことにした──。