私は彼の目線に合わせるように屈むと、頬を撫でて微笑んだ。

「どこも怪我とかしてない?」
「……うん」

 その言葉を聞き安心した後、私と殿下は目を合わせて頷いた。
 よかった、この子に何もなくて……。

「で……ニコラ様、お怪我は?」
「いや、大丈夫だ。それよりも……」

 私の体は急に殿下に抱きしめられる。

「二コラ様!?」
「お願いだ、何のために私がいるんだ。もう危険なことはしないでほしい」
「すみません……」
「心臓が止まるかと思った」

 何もできないくせに私は無鉄砲にナイフを持っている男の前に出てしまい、殿下に心配をさせてしまった。
 今この瞬間に気づかされてしまった。
 この手帳を頼りに、お父様の治療薬のためだけに一人で旅に出てきてしまったけど、私は弱い……。

「あの……」

 私が殿下の腕の中で考え込んでいると、男の子が少し呆れた声色で話しかけてくる。

「いい感じのところ申し訳ないのですが、あなたたちはどなたでしょうか? 何かお礼をしたいのですが……」

 私は慌てて殿下の腕の中から抜け出すと、早口で話す。