魔法での戦闘は禁止されているし、どうすれば……私に戦える武器は……。
 その瞬間、一気に男は私との距離を詰めて切りかかってきた。

「アリスっ!」

 私は咄嗟に男の子を守って体を丸めたが、私の体に痛みはこない。
 急いで振り返ると、そこには剣をかざして私と子どもを守る殿下がいた。

「なっ! こいつ……!」

 殿下は相手の攻撃の力を受け流すと、そのまま身を翻して相手の背中側に回る。
 そうして男の手を捻り上げると、一気に地面へと伏せさせた。

「いってえ!!!」
「アリス、何か縛るものないか?」
「あ、はいっ!」

 私は急いで店の中を見て回ると、さっきまで私の後ろにいた子どもが店の奥へと向かって縄を取ってくる。

「お姉ちゃん! これ!」

 渡された縄を急いで殿下のもとへ持っていくと、男の腕を縛り上げていく。

「お前ら、ぜってえ許さねえからな! 俺の……」
「少し黙れ」

 殿下は低い声でそう言うと首の後ろを叩いて男を気絶させた。
 ほっとした瞬間、男の子が私の服の袖をぎゅっと握って小さな声で呟く。

「ありがとう」