背中から伝わってくる殿下のあたたかさやがっしりとした胸板を感じて、私は体がどんどん熱くなってきた。

「で、殿下……」
「ん?」
「これ以上は……」

 私が降参の意を示すと、ちゅっと私の耳元に殿下の唇がつけられて私は殿下の腕から解放された。
 いまだに胸が高鳴って大きく肩を揺らしながら呼吸をしてしまう。
 いつもいつも殿下にからかわれてばかりで、こんなことで彼の妻になれるのだろうか。

「ふふ、少しからかいすぎたかな。大丈夫だよ、一緒にいるけどちゃんと何もしない。なんなら私を縄で縛ってくれてもいいよ」
「そ、それはできませんっ!!」

 「アリスは優しいんだから」と呟きながら、殿下はクローゼットへ向かって毛布を取り出すと私をベッドに横たわらせて、それをかけてくださる。

「ここらの夜はまだ冷えるから、これを着て寝て」
「あ、ありがとうございます」

 そうして私の頭をひと撫ですると、「おやすみ」と言ってもう一つのベッドに向かう。
 明かりが消されてほのかに薄暗い感じになると、私の瞼はゆっくりと重たくなっていく。