「殿下、あの……」
「なんだい?」
「なぜ、ベッドは二つあるのに私の隣で寝ていらっしゃるのですか?」
「アリスが眠っている間に野盗に襲われでもしたら大変だろう」
「いや、ここはセキュリティのしっかりしたホテルですので、大丈夫かと」
「アリスが眠っている間に良からぬ輩が襲ってくるかもしれないだろう」
「……むしろ私は今の状況に危険を感じているのですが」

 私はがばっとシーツを剥いで隣で優雅に寝ている殿下に抗議する。

「殿下っ! 私たちは夫婦でもないのですし、その……一緒に寝るのはいかがなものかと」

 すると殿下は体を起き上がらせて胡坐をかくと、私の腕を引っ張ってそこにすっぽりを私をおさめてしまう。
 恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまった私の耳元で吐息をわざと漏らすように甘い声で囁く。

「三か月後には私の妻になってくれるのだろう、アリス」
「う、う……」
「おや、嫌なのかい?」
「い、嫌ではないです……」

 私が消え入りそうな小さな声で呟きながら俯くと、そのまま私を後ろから抱きしめる。